10.


あ。ぼんやりしてたけど、今なら足も押さえられてない。
よし!こっちに戻ってきたら蹴り上げてやるっ!!

しかしオレの考えは甘かった。
声同様、下半身にも力が入らずスグに押さえ付けられてしまったのだ。

もう逃げられないのかよ…。
気まで弱くなる。

「な〜に情けない顔してんだ?ハハッ」

笑い事じゃねぇよ!

拗ねる様にムクれて、横を向く。

「オイオイ。可愛い事してんなよ。誘ってんのかぁ?」

ククク…と肩を震わせて笑うと、キースはオレの顎を掴んで前を向かせた。


唇が、重なる。


じわり…と口の中に液体が広がる。

今度は粘液ではなく、サラリとした……

さ、酒だっ!!

流れ込んできた酒の量は多く、キースの舌の動きも先刻とは違う。

「っぐ…ク…ッん…」

呼吸をしようと鼻から空気が通る度に、酒が少しづつ喉を刺激しながら降りていく。

口中を深く責められ、呑みきれない酒が口端から溢れる。

口づけは酒が無くなっても終わらなかった。
キースの舌がしつこく絡み付き、次第にどちらのものともつかない唾液が溢れ出す。

耳に響く水音と、酒に与えられた熱で頭がボォっとしてくる。




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