11.
「「モクバ!?」」
瀬人と乃亜が同時に声を上げる。
「モクバ!俺を思い出したのかっ?!」
モクバは答えず、形を成したままの瀬人自身に舌を這わせた。
…違う…
モクバの記憶はまだ、戻ってはいない…!
モクバの姿を確認しながら、乃亜は愕然とした。
モクバは…
記憶が戻っていないにもかかわらず、無意識下で瀬人を『兄』と認識しているのだ…!
乃亜の目の前で、モクバが瀬人に愛撫を続ける。
「モクバ…?お前がこれをする必要は無いんだ。…帰るぞ…?」
瀬人がモクバを止めようとしたが、その声さえモクバの耳には届いていない。
「ぃ…ゃ、だ…ッ。いやだ!ッやめろ!!やめろ!モクバぁっっ────ッッ!」
乃亜は震える躯を必死に起こし、夢中で叫んでいた。
その声にビクリと反応し顔を上げたモクバを素早く瀬人から引き離す。
「乃亜っ、往生際が悪いぞ!モクバは返してもらう!!」
瀬人がモクバを捕らえようとした時には、既に乃亜はモクバを抱え宙に浮いていた。
「モクバは渡さない…モクバはボクの弟なんだ!」
乃亜がヒステリックに叫ぶ。
「乃亜!卑怯だぞ!!モクバを返せ!」
突如、辺りが闇に包まれた。
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