10.
「っは、ぁ…ッァ」
まだ躯に残る快楽の余韻を味わうかの様に、微かに躯を震わせながら呼吸を整える。
呼吸が落ち着き、次第に意識がハッキリしてきた乃亜は、未だ快楽から抜け出せないまま瀬人の方を見上げた。
「フン…所詮、貴様はこの程度という事か」
「…ッ!?」
そこには、達する事なく冷徹に乃亜を見下ろす瀬人の姿があった。
瀬人の言葉が耳元にこだまし、頭に血が上ってくる。
…ボクが…
…ボク負けた!?
…瀬人、に…?
いや!そんな筈は無いっ!
違うっ!
違う!!
そんな事、認めない!
乃亜は力の入らない躯を震わせ、必死に起き上がろうとした。
しかし、思うように動かせない。
「ッ…く、…ハ…ァ」
瀬人の足元でもがいていると思うと、一層気が焦りだす。
「にい…さま…?」
ふいに後ろからモクバの声が聞こえた。
重たい頭を持ち上げ後ろに振り向かせると、乃亜の中で達したまま床に座り込んでいたモクバの虚ろな瞳が、瀬人の姿を捕らえていた。
「っ…モク…バ…?」
乃亜の声は、モクバには届いていない様だった。
ただ、ぼぉっと瀬人の方を見つめている。
…記憶が戻ったのか?
…いや、違う…
「モクバ…?」
乃亜はもう一度モクバの名を呼んだ。
「に…い…さま…」
モクバがフラリと起き上がり……
瀬人の下肢に触れていた。
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