5.
乃亜は荒れた呼吸を整え、モクバの頬を撫でながら囁くと、そのまま下肢へ手を下ろしズボンの上からモクバ自身に触れる。
その時───…。
「モクバ!!」
憤怒の表情で駆け寄った瀬人が、モクバの腕を掴み乃亜から引き離した。
「っイタ、いッ…放せよ!」
掴まれた腕を振りほどこうとするモクバを捕らえたまま、瀬人は乃亜を睨み据える。
「貴様…ッ、一体何のつもりだ!?」
「何のつもりか…って?いやだな、ボクはモクバと兄弟の絆を深めていただけさ…」
乃亜の言葉に瀬人の肩が震える。
「キミが教えたんだろ…?スゴく、上手かったよ…モクバ」
瀬人は乃亜の言葉を振り払う様に後ろを向くと、モクバを連れてその場を去ろうとした。
しかし、モクバは瀬人の手を振りきり、乃亜の元へ駆け寄る。
「ッ乃亜兄様…!」
「ぁあ…モクバ!!大丈夫だったかい…?」
乃亜は両腕でモクバを抱きとめると、勝ち誇った笑みを浮かべ瀬人の方を見た。
「モクバはボクの弟なんだよ…?」
「っく…ッ、モクバ!!俺が判らないのか?!モクバっ!」
瀬人の必死の声も今のモクバには届かない。
ただ、眉をひそめ『兄』であるはずの男を見つめる。
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