3.


「…乃亜兄様…っ」

モクバはもどかしそうに乃亜の名を呟くと、手を素早く下腹部に下ろし、乃亜の下肢を露にする。
虚ろな表情に微かな笑みを浮かべ、モクバは少しづつ形を成し始めている乃亜自身を両手で包むと口づけた。

愛おしそうに、何度も口づけ舌を這わす。

「ッは…ぁ…アッ…っう…っっ」

その愛撫の心地良さに下肢が奮え、背中に汗が浮き出す。

「モ…クバ…ぁッ…何処で…こんな…ァッ」

「ン…く…ぅ乃…亜…兄様ッ…」

モクバは乃亜の問いに答えるでもなく、ただその目に映る『兄』乃亜の名を呟き行為を続ける。


…瀬人…か…

快楽に身を奮わせながらも、乃亜の心にイラだちが起こる。

ふと乃亜の目に、瀬人の姿が映った。
マリクとの情事を終えた瀬人は、衣服を整え再び偽りの世界を歩きはじめる。

「…っフ…そう…だ…良い事を、思いついたよ…モクバ…ッ」

乃亜は自らに愛撫を続けるモクバの頬を撫でると、瀬人の映る画面に視線を戻した。


ココにおいで…瀬人。

モクバの兄はボクだけだという事を、判らせてあげるよ……





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