3.
薬と水の入ったコップを乗せたトレイを手に戻ると、部屋の明かりが消えていた。
不審に思ったリシドは薄暗い部屋の中を目を懲らして見まわす。
「…マリク様…?」
暗さに目が慣れていき、ベッドの方を見るとそこにマリクが立っていた。
「マリク様!寝ていなくては…っ」
リシドは、トレイを脇のテーブルに置くと慌ててマリクの方へ歩み寄る。
と、不意に違和感を覚え立ち止まった。
「…マリク…様…?」
そこには、マリクであってマリクでないものが居た。
髪は逆立ち、目つきは鋭く宙を見つめ、額には鈍い光を放つウジャトの紋が浮かび上がっている。
これは…
あの時の…!?
脳裏に過ぎる、血の惨劇。
「リシド…熱はもういい。少し出掛けてくるよ…」
呆然と立ち尽くすリシドにそう告げると、マリクはリシドの横を通り過ぎる。
「!待て…」
はた、と気付いたリシドがその腕を掴んだ。
「何処に行くつもりだ…」
「ククク…そう恐い顔をするなよ、リシドぉ…」
聞き慣れない声使いと話し方が耳に障る。
「お前も知ってるだろぅ…?ファラオの居場所が判った事は。こんな楽しい話しはナイよなぁぁ?」
マリクはリシドの方を向くと、面白そうに目を見開いた。
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