2.


「マリク様、どうされました?」
食事の進まないマリクの様子に、リシドが心配そうに声をかけた。

「ん…何か…気分が悪いし…寒い…」

リシドは席を立つとマリクの元へ近づき、額に手を当てる。

「ッ!すごい熱ではありませんか!何故スグにおっしゃって下さらないのです!」

返事の声も出ない…といった様子のマリクを抱え上げると、リシドは寝室へ急いだ。
マリクをベッドに寝かせ、部屋を出ようとしたリシドの服がつかまれる。

「どこ行くんだ…リシド」

自らの服の裾を掴んで離さない手をそっと握り、リシドは優しく諭す様にマリクに告げた。

「薬を取ってきます。すぐに戻りますから、大人しく寝ていらして下さい」
そう言うと、マリクの手を布団におさめ部屋を後にした。


「リシド」

マリクは熱に浮された虚ろな瞳でリシドの出て行った扉を見つめると、苦しそうに呟いた。

体が汗ばみ、服が張り付く感触に嫌悪感が湧く。
頭がグラグラと揺れる。

 苦しい…
 気持ちが悪い…

明かりのついた筈の部屋で、視界が暗くなっていく。
苦しさと恐怖で、ベッドから出ようとするが体が動かない。


体は次第に重くなり、底の無い闇に引きずり込まれていく。


「ぃや…だ…っリシド…ッ!」


か細い声でリシドの名を呼び、マリクの意識は闇へと堕ちていった。





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