3.


何も言えない、何もできないまま…腕を掴まれる…
いつの間にか、見つめ合ってる…抵抗できない…。

…そう…まるで…『僕』の瞳に吸い寄せられたみたいに…!

『俺は…一度でいい、お前に…お前に触れてみたかっただけだ…逃げたいなんて…考えないでくれ…俺を…拒まないでくれ…!』

この一言で…「僕」は『僕』の瞳に、そして言葉に、飲み込まれてしまっていった…。
  

半開きの窓から洩れる蒼白くて、か細い月明かりだけに照らされてる、『僕』と「僕」。

…デスクライト…いつ消したんだっけ…?
そんなの…もうどうだっていいや…。

…さっきと全然違う…
なんでだろう…もう『僕』が怖くない。
あの言葉と…寂しげにうつむいた…瞳のせい…?

…あぁ…今、「僕」の心臓の音がはっきり聞こえるよ…。

…『僕』も同じ…?

手を伸ばして、『僕』の胸に…そっと触れてみた…。



…僕と…

同じだね…。



『僕』と「僕」、二人同じく激しく波打つ、ふたつの心臓の音…。  




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