7.


──バシッ。


渇いた音が部屋に響く。

マリクは差し出されたリシドの手を叩き、その勢いで自らの身体のバランスを崩した。

ベッドの柵につかまり、倒れそうになった身体を必死にささえる。


その心に、ふつふつと何かが沸き上がってくる。

「…ック…ククク…ッ!ハッ…ハハぁッ!!」

大袈裟に笑い声を上げると下からねめ上げる様に、リシドを睨み据えた。

「とんだ茶番劇だったぜ?遊びはもう終わりだ、リシド」


その言葉に、リシドの表情が一瞬険しくなった様な気がした。


「なんだ…?やっぱり気付いてなかったのか。クク…残念だったな。
オレはお前の大切な『マリク様』じゃねぇんだよ」

マリクは、その顔を醜く歪ませ皮肉っぽく笑ってみせた。


優しく扱われるよりも…
今、向けられた嫌悪の表情(カオ)が…──


  心地イイ。


「何をおっしゃっているのですか、マリク様。ご冗談は…──」

リシドの言葉が遮られる。
その口元に、マリクの唇が重なっていた。

しっとりと、湿り気を帯びた舌が、リシドの唇を舐め上げる。

「…冗談だって…?
クク…それじゃあ、試してみるか…?この身体を…」

マリクはリシドの手を取ると、自らの服の下に滑らせた。

温かなリシドの体温が、素肌に馴染む。





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