3.


「マリク様…」

リシドがボクの肩越しに窓を閉め、そのまま腕にボクを包み込む。

「こんなに冷えては風邪をひかれますよ。まだ空気が冷たいですからね」

優しく、静かな声が耳元に響く。

「ウン……」

ボクは小さく頷くと、リシドの腕をとり、その胸に背中を預けた。

背中から伝わる温もりと、鼻孔を微かに擽るリシドの匂いを感じているうち先刻までの不安感が薄らいでくる。


…あの時…
生きる事を放棄していたら、この温もりを再び感じる事は無かっただろう……


愛しい人の温もり…



ココロに温かい想いがじんわりと広がる。


それと同時に、胸が締め付けられる様な感覚に襲われた。

先刻の不安とは、また違う。
どうしようもない…憤り。

それは、リシドの事を想えば想う程に強くなっていく。


「…リシド…」

「はい?」

ボクはリシドに背を向けたまま話し掛けた。

「お前はボク達の大切な家族だって、姉さん言ってたよな。
…ボクも…ボクも、っ大切に思ってる…っ」


背を向けている為、今リシドがどんな表情をしているか判らない。
ただ、黙ってボクの話を聞いている。


…リシド…
今、お前は何を思っているんだ…?




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