1.
「遅い……」
深夜2時。
人気の無い公園。
その中央にある噴水の際で城之内は1人、イライラしていた。
「ったく。自分で呼び出しといて遅れるなんて、ナニ考えてんだ」
妙に大きい声で独り言を言っているのは、彼なりに恐怖心を無くす為だろう。
周辺の木々が風で音をたてる度にオドオドと辺りを見まわしている。
と、公園の端側に建つ街灯の下に人影が見えた。
マリクだ。
「遅ぇよ!」
一喝入れる城之内に、マリクは悪びれる様子もない。
「ごめん、ごめん☆」
と軽く手を振りながらにこやかに笑っているその姿に、怒る気力も失った城之内の鼻を、フっと甘い薫りが触れた。
はじめは気のせいかと思ったその薫りは、マリクが近づいて来るにしたがって鮮明になってくる。
「どしたの?城之内くん」
「のわっ!?///」
ぼんやりとしているところで顔を覗き込まれて、城之内は思わず奇声を発してしまった。
何故か心臓が激しく脈打つ。
「お…お前、香水とかつけてんのか?」
「??何で?つけてないヨ?」
そう言いながら、マリクは自らの腕を嗅ぐ仕種をした。
「あ、来る前にシャワーしてきたから石鹸のニオイがするかな?」
と小首を傾げる。
「いや…そ〜ゆうニオイじゃねぇと思うんだけど…」
確かに石鹸の香りもするがそれとは別に『その』薫りは城之内に触れてくる。
決して鼻につく不快感はなく、静かに、しかし深く入り込んでくる。
「そんな事より…」
マリクが城之内の首に腕をまわしてきた。
ふいに顔が近づき、唇が軽く触れる。
「なっっ!?///」
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