10.


翌朝―――

ボクは見慣れた腕の中で目覚めた。

「…リシド…?」

頬の刻印にそっと触れると、リシドが目を覚ます。

「ずっと、傍に居てくれたんだ?」

ボクの問いにリシドは気まずそうに頷いた。

「……?」

ふと視線を下ろすと、リシドの胸元に生々しい傷痕を見つけた。
皮は剥げ、赤く腫れ上がった身が覗いている。

「どうしたんだ…?これ…」

リシドは答えない。

「…ボクが…やったのか…?」

「随分…苦しそうでしたから…」

リシドはそれだけ言うと口を閉ざしてしまった。


「ごめん…」
ボクは消え入る様な声で謝る。

だって…何も覚えていないんだ。

覚えているのは…熱の苦しさと、闇への恐怖。


「マリク様が謝る必要はありません…私の身よりも、マリク様が無事でいる事の方が私には大切ですから」

リシドの言葉が苦しい。

「ほんとに…ごめん」

ボクは再び謝ると、傷口にそっと口づけた。


何度も

何度も


声にならない言葉を心の中で呟きながら。






「ボクを嫌いにならないで……」




[END]





〔前頁〕〔次頁〕


〔目次〕
〔携帯TOP〕
〔TOP〕