8.
「次は海馬に犯されながら、俺が見ているのも…」
マリクは言葉を飲み込んで椅子に座ったまま乃亜を抱き寄せ、胸元に強く吸いついた。
胸元が痛み、躯が痺れ、蕾はまだ涙を流したまま、乃亜は瀬人が映っている画面をじっと見つめていた。
「瀬人…」
乃亜は小さく呟いた。
マリクにその声は聞こえないのか、まだ胸元を吸い続けている。
「できたぜ。紅い薔薇…。海馬より先に俺がお前を抱いた。見る度にそれを思い出す、紅い薔薇が…な」
マリクが乃亜をようやく解放する。
吸われた胸元が…痛い。
(何をされたんだ?)
乃亜にはマリクの言葉の意味が判らない。
今の乃亜は、胸の痕にも気付かない。
まだ躯の痺れと蕾の余韻を味わい、恍惚の瞳で見つめる乃亜の元を、マリクは不敵な笑みを浮かべながら去っていった…。
乃亜の躯だけでなく心にも深紅の薔薇を残して…。
[END]
〔前頁〕〔次頁〕
〔目次〕
〔携帯TOP〕
〔TOP〕