1.


静かに響く機械の唸音

広く薄暗い一室──

その中央に座し、宙に浮いた数々の映像を見つめる少年──乃亜。


「そんなトコにつっ立ってないで、こっちに来たら?」
乃亜は振り向きもせずに口を開いた。

「何だ…気付いていたのか…?ククク」

声の主はコツ・コツと足音をたて乃亜に近寄る。

暗闇の中、ぼんやりと浮かび上がった男の顔

褐色の肌に掛かる薄い金色の髪。
その下の額には不思議な紋が浮かび上がっている。
虚に開かれた紫艶の瞳には、何も映ってはいないのか…。
口元には薄ら笑いを浮かべて……。
    


「フフフ…随分と楽しそうな事をやっているじゃないか…?」
男は乃亜の顔を覗き込み、面白そうに呟く。

「ああ、楽しいよ」
乃亜は事もなげに答えた。
その表情は絶対的な自信と、余裕を持った笑みを含んでいる。

「ところで、キミは誰かな…?」
たいして興味は無いんだけどね…といった様子で、乃亜はその男に問い掛けた。

不意に男の手が乃亜の頬に触れる。

「マリク、だ」

手は乃亜の顎を掴み上を向かせると、マリクは顔を近付けてきた。

「怨讐の念と破壊のニオイ…貴様の周りにプンプン匂うぜぇ?」

乃亜は表情を崩さない

「そして…お前は…自分の目的の為に、それを利用している…」
そう言うと、マリクは舌なめずりをした。




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