1.


「なっ…!
 何をッッ!!」

突然、壁に体を押し付けられ、マリクは抵抗するタイミングを逃した。

目前に顔が近づき、そのまま口を封じられる。

「ッん…!」

咥内に侵入してきた相手の舌が、逃れようとするマリクの舌を捕え、浚に深く絡み付いてきた。

「…ッふ…くッ…っ」

息苦しさに口端から吐息が零れる。
マリクは相手の腕を掴んだままの自らの指先から、力が抜けていくのを感じながらも必死に抵抗を続けた。


否、抵抗を続けたつもりだった…

しかし、自らの舌に絡み付き咥内を貧るように求めてくる、その行為に抗う力が削ぎ落とされていく。


「っ…ッは…っ…ぁ」

深く長い咥口の戒めから開放されたマリクは、同時に溜め息の様な呼吸を漏らした。

「クク…っ、中々イイ反応じゃねぇか」

その言葉を発した相手をマリクはキッと睨み据えた。

「一体…何のつもりだ。
 …バクラ!」

突然うけた行為でありながら、それを少しでも受け入れてしまった自らの躯に嫌悪を感じながらも、それを悟られぬ様キツい口調で、目の前の相手を問い質す。

その様子を、さも読み取っている様に…ニヤリと薄笑いを浮かばせると、バクラはマリクの耳元に唇を寄せた。

「せっかく協定を結んだんだ…失敗の無いよう、お互いをよく知っておいた方がイイだろ?」

低く囁く様に耳元で呟く。




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