1.
朝。
ボクは何時もの様に目覚めた。
窓を開けると冷たい空気が肌を撫で、部屋に流れ込む。
目の前に広がる朝焼けの空。
眩しい程の、紅───
「…キレイだな…」
無意識に感嘆の言葉がこぼれる。
今まで、幾度の朝を迎えてきたか。
朝の空がこんなに綺麗だなんて…思った事が無かった。
ふと、不安が過ぎる。
この朝焼けは現実なのか…?
目前の景色は全て夢で…
目が覚めれば、何ひとつ変わらぬ『元の世界』
闇深き地下で…外界に夢を馳せながら、淡々と時を過ごしているのか───
愚かな憎悪に飲み込まれ、復讐の時を待っているのか───
身震いがする。
全てが足元から崩れていきそうな不安感。
唯、確かなのは…ボク自身が父を殺めたという現実。
いま、ボクが立っているのは夢?
…現実?
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