2.
*・*・*・*
「まったく…あそこで身体を奪われるとは思わなかったねェ」
突如、闇全体を震わす様に低くぬめりを帯びた声が響き渡り、身体にまとわりついてきた。
「まさか、アレでオレに勝ったつもりでいるのか?…主人格サマよぉ…ククク」
淫靡で卑猥な笑い声と共に、闇の中に1人の男の姿が浮かび上がる。
ベースは自分と同じでありながら、別人の様なその姿。
破壊に快楽を求めた、狂気の瞳。
行き場の無い憎しみと孤独の苦しみから、自らが生み出した…もう一人の自分。
もう一人の『マリク・イシュタール』
ボクは夢を見ているのか…?
もう見る事は無いだろうと思っていた、その姿は…変わらず憎悪の色に染まったまま、音も無く自分に近づいてくる。
指先がしなやかに動き宙に孤を描くと、ボクの頬に触れる。
「貴様の生には…」
お互いの息遣いが感じられる程に顔を寄せると『それ』は、面白そうに淫猥な笑みを浮かべ呟いた。
「一点の光も注がれる事はねぇんだよ…」
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