11.


その時。


コンコン──

ノックの音と、その後に海馬を呼ぶ声がした。
海馬が顔を上げる。

「なんだこんな時に」

さも面白くない、といった風に扉の方を見ると、そのままベッドを降りて扉へ向かった。

「邪魔はするな、と言っただろう…」

扉を少し開け、誰かと話ている。
どうやら会社の事の様だった。いくつかの会話ののち、海馬は遊戯を振り返った。      

「10分でもどる。待っていろ」


バタン。


扉の閉まる音がした。
呆然としていた遊戯は慌てて跳び起きる。
はだけた服を直しベッドから飛び降りると、急いで扉へ向かった。

 今のうちに逃げよう。

…しかし、そう簡単に逃がしてくれそうにもなかった。
扉には当然の如く外鍵がかかっていたのである。第一よく考えたら、開いても廊下に誰かが控えている様な気がした。

 窓だ…。

急いで窓に駆け寄りカーテンを開ける…と、そこには窓など無かった。
壁だけである。

「くっ…このカーテンは何なんだ?!」

 いや、それ以前にこの部屋は何なんだ…。

他に逃げ道らしきものも見当たらない。
  

 …………。

遊戯は昼間見た、海馬の不敵な笑みを思い出していた。高笑いまでもが響いてくる。  だんだんと、血の気が引いていく音が聞こえる思いがした。

  もう…ダメか…?


∞ ∞ ∞



週明け。

遊戯を見た者は口をそろえて、こう言った。


「遊戯、何か…やつれた…?」




[END]





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