20.
目覚めると、目の前に見慣れない白い天井が広がっていた。
──どこだ─…ここは…?
薄もやのかかった頭で考えながら辺りを見回す。
壁も窓に掛かったカーテンも、全体が白で統一された部屋。
起き上がろうとした時、背中に痛みが走った。
「ッ…っぁ」
苦痛に呻き声をあげた時、ガチャリ、とドアの開く音が聞こえた。
音のした方へ顔を向ける。
「リ…シ…ド…?」
そこには、見慣れた顔の男が立っていた。
「マリク様…ッ。気が付かれたのですね?」
やさしく微笑みながらマリクに近付くと、リシドはマリクの頬へ手を添えた。
「ここ…は?」
「病院です」
マリクの問いにリシドは続けて答えた。
「マリク様…交通事故に遭われたのですよ?
…覚えていらっしゃいますか?」
マリクの脳裏に、眩しい光の残像が甦る。
「交通…事故…」
「事故に遭われて三ヵ月…
意識が戻らない貴方を、どれだけ心配したでしょう…」
愛おしそうにマリクの髪を撫でると、リシドは立ち上がった。
「医師(センセイ)を呼んできますね?」
そう言うと、リシドは慌ただしく部屋を立ち去る。
立ち去る際に顔を逸らしたリシドの、その目には涙が溢れんばかりに溜まっていた。
涙を隠す様に立ち去ったリシドの姿に、マリクは愛おしいさを感じ、小さく微笑む。
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