17.
「私と貴方は…少し似ていると、思ったのです…。
私は…自らの内に在る、醜い欲の姿を見せ付けられている様で…
貴方を直視出来なかった…」
でも、あの時…
私とマリク様にとって、貴方は必要な存在だった。
貴方が居たからこそ…
リシドは起き上がり、マリクを腹部に乗せたまま向かい合わせに座った。
「貴方を、貴方と認識して…こうなった事を…後悔はしていません…
今は、ただ…愛おしいのです…」
静かに、リシドはそう告げた。
「ッ…煩い!!
煩い!うるさいッ、ウルサイ!!
そんな話は聞きたく無いッ!」
マリクは突如、癇癪を起こしたかのように絶叫し、両手で耳を塞いだ。
頭を、激しくリシドの胸元に打ち付ける。
「そんなのは…お前の勝手な思い込みだッ!!…オレは…ッッ!!」
興奮のあまり、マリクは声を詰まらせた。
リシドに頭を押し付けたまま、激しく息を切らし、肩を上下させる。
「ッ…オレは…、手前ぇの大好きな父上を殺ったんだぜぇ?
…ック…ククク…。とんだ偽善だッ!!!」
「…そう、かも…しれません」
リシドはマリクの肩に、そっと片手を添えると…そのまま手を背中へと下ろした。
その背に刻まれた、自らの運命をも狂わせた刻印を…静かに指で伝う。
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