16.


ピクリ。



リシドの言葉に、マリクの頬がひきつる。


「へぇ…?オレだと判って…あんな態度をとっていたってのか!?
ぇえッ!?…ふざけんなッッ…!!」


リシドの首に添えられた両の手に力が入る。


「ッ…貴方だと、判っていたからこそ…私は…ッ」


息苦しさに言葉を詰まらせたリシドは、ゆっくりと自らの首に巻かれたマリクの指を剥ぎ取った。

マリクの両手を掴み、その目を真っ直ぐに見据える。


「貴方も…私にとっては、大切な…マリク様です…」

「ッ!!」



バシッ。


掴まれた手を振りほどいた勢いで、マリクの手の甲がリシドの頬を叩いた。

「…何、寝言…言ってやがるッ。
お前のせいで…オレは、表に出られなかったんだぜぇ…ッ?」


皮肉めいた笑みを浮かべ、マリクはリシドの言葉を否定していた。


「そう…ですね…。
それ以外、私に…方法はありませんでしたから…」


視線を逸らさずに、リシドは続けた。


「貴方を閉じ込める事でしか…
私は、貴方の暴走を抑える事が出来なかった…

貴方と向かい合う勇気が…持てなかったのです」


いつの間にか律動を止め、ただお互いの熱と鼓動だけを感じながら…
リシドの言葉だけが、静まり返った部屋に響く。


「私と貴方は…」



間を置いて、深く息をつくとリシドは言葉を続けた。





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